往事茫々 昔のことぞしのばるる・・・

古希ちかくなった暇なオジさんが、あれこれと折にふれて思い出したことや地元の歴史などを書き留めていきます

5 「一時間目の喇叭」その1

  教員が控所へ揃うには一時間目の喇叭(らっぱ)が鳴らなくてはならぬ。大分時間がある。(中略)
    そう、こうする内に喇叭が鳴った。教場の方が急にがやがやする。もう教員も控所へ揃いましたろうというから、校長に尾(つ)いて教員控所へ這入った。(二)

   始業や終業などの合図をするのに、現在では時報チャイムが用いられているのが普通です。
 広く知られているのは「ウエストミンスターの鐘」といい、ロンドンにあるウェストミンスター宮殿(英国国会議事堂)」の時計塔(ビッグ・ベン)が奏でるメロディーです。

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(「ウエストミンスターの鐘」の楽譜)
 戦前までの学校では、「カラーン カラーン」という時鐘によって始業・終業等の合図を行っていたのではないかと勝手に想像していましたが、明治の中学校では、「喇叭」によってそれを行っていたのでした。 
 東京府尋常中学校(後の東京府立第一中学校、現在の都立日比谷高等学校)でも、「校内の信号は、集合、点検、放課には喇叭を用ひ、終業には点鐘を以てすべし。」(「東京府尋常中学校規則 生徒細則第二条」明治三十年:一八九七年) とあります。同校の場合は「時鐘」を併用していたようです。
 「軍隊の一日は、ラッパに始まり、ラッパに終わる。」と言われますが、森有礼による兵式体操の導入と軌を一にしたような「軍隊式の時間管理」のスタイルと言えるでしょう。
  この始業ラッパはどんなメロディーだったのでしょうか。

 『坊っちゃん』がテレビドラマ化、あるいは映画化されたものを、youtubeでいくつか見てみました。 
 すると、本木雅弘主演のNHK新春ドラマ『坊っちゃん ー人生損ばかりのあなたに捧ぐー』(平成六年:一九九四)では、ラッパ手が「一時間目の喇叭」を吹くシーンがありました。その始業ラッパのメロディーは、なんと陸軍の「起床ラッパ」のものでした。

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    また、昭和十年(一九三五)の映画『坊つちゃん』(山本嘉次郎監督P.C.L.映画製作所)では、授業終りのラッパが鳴るシーンがあります。そこでは、陸軍ラッパの「解れ」(解散)が奏でられていました。
 実際にどんなメロディーだったのかは、残念ながら不明ですが、おそらく軍隊ラッパのそれで代用していたのではないでしょうか

(写真は「陸軍喇叭譜」より「起床」。明治四十三年、国立国会図書館デジタルライブラリーより)

 

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# 高校時代(1971~1974)に写真のような鐘が,、校内掲示板のところに掛かっていた記憶があります。おそらく、停電でチャイムが鳴らないときなどに使用したのでしょう。卒業後8年が経って母校に赴任した際は、校舎が鉄筋に建て変わっていて、鐘はありませんでした。

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