往事茫々 昔のことぞしのばるる・・・

古希ちかくなった暇なオジさんが、あれこれと折にふれて思い出したことや地元の歴史などを書き留めていきます

二人の日本学士院賞受賞者 

母校・広島大学の教授で日本学士院賞受賞者が7名(うち恩賜賞2名)いらっしゃるのですが、そのうちのお二人の思い出を綴ってみたいと思います。

日本学士院賞・恩賜賞
受賞者一覧
日本学士院賞」は、学術上特にすぐれた論文、著書その他の研究業績に対して授与される賞です。過去には、木村栄氏、高峰譲吉氏、野口英世氏をはじめ、後にノーベル賞を受賞した湯川秀樹氏、朝永振一郎氏、福井謙一氏、江崎玲於奈氏、小柴昌俊氏、野依良治氏、鈴木章氏も受賞しています。
広島大学においても、これまで7人の受賞者を出しています。そのうち2人は、日本学士院賞の中から推選される「恩賜賞」も受賞しています。

藤原 武夫        
任意の結晶方位を有するアルミニュム及び鉄単結晶の製作法とその物理的性質のX線的研究    
第38回(昭和23年6月11日)
川村 智治郎        
両生類を材料とする生物学的諸研究    
第52回(昭和37年5月11日)
金子 金治郎        
菟玖波集の研究    
第58回(昭和43年5月30日)
今堀 誠二    
中国封建社会の構造 -その歴史と革命前夜の現実-    第70回(昭和55年6月11日)
小林 芳規        
角筆文献の国語学的研究    第81回(平成3年6月10日)
沼本 克明        
日本漢字音の歴史的研究―體系と表記をめぐって—    第92回(平成14年6月10日)
佐竹 明        
ヨハネの黙示録」に関する研究    第101回(平成23年6月20日)

https://www.hiroshima-u.ac.jp/about/awards/japan_academy_prize

※この7名のうち、藤原(広島高等師範から京都帝大)川村、金子、今堀の3氏が広島文理科大学、沼本氏が新制広島大学のご出身です。 

お一人目は昭和49年(1974)の入学当時に教養部長(教養部は同年6月に総合科学部が新設されて「総合科学部」になりました)であった今堀誠二氏(東洋史学、1914-1992、広島文理科大学卒)です。



第70回(昭和55年・1980)において「中国封建社会の構造ーその歴史と革命前夜の現実」という研究題目でした。
教養部(総合科学部)で中国史の授業を受けた事はないのですが、たった1回、それも入学式広島市公会堂で行われた)での式辞の内容を50年経った今も一部覚えています。

広島市公会堂



だいたいこんな内容です。
「諸君の中には、広島大学のような田舎の大学に来て少し不満を持ったり、いわゆる旧帝国大学に対してコンプレックスを抱いている人があるかも知れない。
しかし、旧帝大とは言っても、私より出来の悪かった二人の弟*が大阪と東京で教授をしてるぐらいだから、それほどたいしたことはない・・・・」
*今堀宏三氏(生物学、大阪大学教授、1917-2001,広島文理科大学卒)
今堀和友氏(生化学、東京大学教授、1920ー2016、東京帝国大学卒)

今堀先生の場合は、旧帝大の研究者何する者ぞという強い気概、自負の持ち主だったからこそ、立派な業績を残されたのだと思いますが、さすがに入学式で旧帝大コンプレックスをこういう形で意識させられるとは思いませんでした。
これは余談ですが、このお話を公会堂2階の父兄席で聴いたのです((^_^))
というのも、前日の晩に下宿のオジさんに公会堂へ行くには広電のどの停留所で降りればいいかを尋ねていたのですが、オジさんの教えてくれたのは古い名称で、当時は停留所名が変わっており、うっかりと乗り過ごしたのでした。
入学式に遅刻したために、1階の学生席ではなく、2階から傍聴したような感じでした。

 

お二人目は、第81回(平成3年・1991)に恩賜賞も受賞された小林芳規氏(1929ー、東京文理科大学卒、2019年には文化功労者にも)です。授業の対象となった研究題目は「角筆文献の国語学的研究」でした。

(2019年 文化功労者広島大学ホームページより)

文学部国語学講座の教授をされていました。教育学からの「お邪魔虫」的な存在であった私のような学生には、あまりにレベルが高すぎて・・・。むしろ当時、助教授であった室山敏昭先生の方言学のほうが親しみやすかったのを覚えています。
学生仲間でも、この小林先生は「すごく偉い先生らしい、研究しすぎて目を悪くしたとか」というような噂が流れていました。
講義中は、学生の方ではなく、教室後方の上の方の一点をみつめながら話されていたという印象があります。
試験はどうだったのか、レポートだったのか、その辺は全く思い出せません。
後年、新書本を出されたときには迷わず買い求めましたが、相変わらず内容のほうには難しすぎて・・・・。

 

上の一覧表を見ると、だいたい10年に一人ぐらいの割合で受賞されているようですね。

言うまでもなく、東京、京都を初めとする旧帝大が圧倒的に多いようですが、旧文理科大学で地方にあるハンデを考慮すると、失礼ながら大健闘のほうなんでしょうね。