往事茫々 昔のことぞしのばるる・・・

古希ちかくなった暇なオジさんが、あれこれと折にふれて思い出したことや地元の歴史などを書き留めていきます

コラム21  「明治のトンデモ校則③」

その3「級長の任務」 

 

 現在の中学校や高校では、各クラスに学級委員長・副委員長がいます。「学級委員」、「クラス委員」、「ホームルーム委員」などと呼んでいる学校もあります。普通はクラス全員の選挙で選ばれています。
   その昔は、「学級委員長」ではなく、「級長」と呼ばれていました。(今でも一部の私学にはその名称が残っているようです)一般的に学級担任が指名するという形をとっていました。
    明治時代、中学校の「級長」はどのような存在で、どのような権限をもっていたのか(持たされていたのか)というのが今日のお話です。

 一例として、明治45年(1912)の「秋田県立本荘中学校一覧」から、関係する部分を抜き出してみましょう。

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秋田県立本荘中学校、明治35年創立) 

(七)級長規程
第一条 各学級ニ級長、副級長ヲ各一人置キ其任期ヲ六ケ月トス
第二条 級長、副級長ハ学級主任ノ推選ニヨリ学校長之ヲ任命ス
第三条 級長、副級長ノ任務左ノ如シ
    一 学校ノ訓示、命令等ヲ伝達シテ其実効ニ努メ其学級一同ノ栄辱振否ヲ以テ自ラ任スヘシ
 二 常ニ其ノ学級生徒ノ行状、修学、衛生等ニ注意シテ校規、校風ニ違フモノアルトキハ之ヲ忠告シ猶用イサルモノアルトキハ学級主任又ハ学校長に申シ出ツベシ
    三 教室内ノ器具ノ保存、整頓、換気、警火等ニ注意スヘシ
     四  教室掃除ノ人数並ニ番割等ヲ定ムヘシ
  五 学級ニ対シテ意見アルトキ又ハ学級ヨリ申シ出ツベキコトアルトキハ之ヲ申告スヘシ 
     六 級長(不在ノ時ハ副級長又ハ主席生徒)ハ教室ニ入ルトキハ其ノ先頭タルヘク教室ヲ出ツルトキハ殿後タルヘシ
     七  副級長(不在ノ時ハ主席生徒)ハ教室ニ入ルトキハ其ノ殿後タルヘク教室ヲ出ツルトキハ先頭タルヘシ
      八 (略)
第四条 級長、副級長ニ所定ノ徽章ヲ附セシム
   (旧字体新字体に改めています 下線は筆者)

 いかがでしょうか。当校が特に厳しいわけではありません。当時の一般的な規程になっています。

    級長さんは本当に大変ですね。
 一般生徒の模範となるだけでなく、彼らの言動を注意深く観察し、注意までしなければならないのです。言うことを聞かない場合は、先生に報告もしなければなりません。
 いわば、先生の助手のような役割を果たしていたのですね。(悪く言うと学校側のスパイでしょうか)
 いくら優秀な生徒でも、これだけの「重い任務」をきちんとやり遂げるのは並大抵のことではありません。
   そこで、学校によっては任務を無事に勤め上げた生徒を「特待生」扱いにしたり、中には「授業料免除」という特権を与えたところもあったようです。
 明治の末期頃から生徒の管理体制が強化されたことを前回とりあげましたが、いよいよ「生徒自身による生徒管理」という形が生まれたのでした。

    ちなみに、学校によってはさらに強力な「監督生」の制度を取り入れていたところもありました。

    これは五年生が任命され、一年生から四年生の各クラスごとに担当者を置くというものです。

     生徒指導、課外活動などで学級担任の補助的役割を担わされていました。

明治43年愛媛県立松山中学校一覧』、国立国会図書館デジタルコレクション参照)